オンラインカウンセリング日記より

人生の中で最も苦痛と絶望を感じたのは最愛の者たちとの別れだった。

それはたくさんの色で満ちた世界から何の色もない世界へと向かって行く。

いつその場所に陽が当たり、見るもの触れるもの全てに色がつくのか誰も知らない。

しかしその道のりを一人で歩き、乗り越えようとするのではなく、誰かと分かち合いながら生きていくのもまた人生だ。

最愛の者たちを失うとゆうことは私たちを悲しませる為だけではない。

人は愛することで深い喜びも深い悲しみも感じる。
愛という感情は穏やかなものだけではないが、人間の中で最も尊い感情の一つだ。
もしも大切な人を、家族や友人を、困っている人たちを守りたい、助けたい、幸せにしたいという最も尊い欲を抱いているならば、その人たちを愛して欲しい。それは自分自身を癒しきることに繋がるだろう。

最愛の者たちが残してくれる最大の豊かさは目に見えるものではない。

私たちは彼らの死を通して、己の人生をどのように歩むのかをしっかりと丁寧に学ぶだろう。心に湧き上がってくる感情の全てをすくいとり、しっかり味わうことで、人間とはどうあるべきかを学んでいく。
ポッカリ心に空いた穴を埋めることも、後悔という思いを手放すことさえも、私たちに「一人じゃないよ」と教えてくれる。決して悲しみを悲しみで終わらせてはいけない。

命とは尊いものである。
その尊さが生み出した思いやりや優しさ、勇気ある行動に心から感謝し、亡くなった「あの人」の命も、あなたの命も全く同じ命であると知ること。
苦痛から解放された時には強く、美しく、私たちの命はまた吹き返していく。そしてそこに集まる豊かさに対し、誇りを持って自分自身に感謝し生きていくことが私たちの生きる意味ではないか。

毛皮をまとった息子へ
廣野紗梨衣

書名：今は亡きあの人へ伝えたい言葉８　2021年版
刊行：株式会社鎌倉新書
ISBN：978-4-907642-42-6

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